昔しある所に一人の天文学者がありました。 従って顔の真中に大きな鼻を祭り込んでいるか、どうだか受合えない。 それではこの両三句は今晩抜く事に致しまして次を弁じ――ええ申し上げます。 　あまり迷亭の言葉が仰山なので、さすが御上手者の鈴木君も、こりゃ手に合わないと云う顔付をする。 本当に死に損いだなと主人まで浮かれ出す。 さてその因縁のある毛布の上へ前申す通り腹這になって何をしているかと思うと両手で出張った顋を支えて、右手の指の股に巻煙草を挟んでいる。 生徒や教師が少々愚図愚図言ったって何が恐ろしいものか、サントブーヴは古今独歩の評論家であるが巴里大学で講義をした時は非常に不評判で、彼は学生の攻撃に応ずるため外出の際必ず匕首を袖の下に持って防禦の具となした事がある。 ここの前を右へ突き当って、左へ一丁ばかり行くと崩れかかった黒塀のあるうちですと鼻子が教える。 そんな論理がどこの国にあるものか。 いかに人の見ていぬ場所でも、猫と座席争いをしたとあってはいささか人間の威厳に関する。 こんなものを受取る理由がない、持って帰れって云うんだそうで。 迷亭はあの時分から法螺吹だったなと主人は羊羹を食い了って再び二人の話の中に割り込んで来る。 ところがあなた大違いで……何か内々でやりますかね。 無論当家の猫のごとく劣等ではない。