博士になるかならんかは僕等も保証する事が出来んから、ほかの事を聞いていただく事にしようと迷亭もあまり好い機嫌ではない。 それでもあなたが御飯を召し上らんで麺麭を御食べになったり、ジャムを御舐めになるものですから元来ジャムは幾缶舐めたのかい今月は八つ入りましたよ八つ？　そんなに舐めた覚えはないあなたばかりじゃありません、子供も舐めますいくら舐めたって五六円くらいなものだと主人は平気な顔で鼻毛を一本一本丁寧に原稿紙の上へ植付ける。 金田か？　何んだあんな奴 それを勉強すると博士になれましょうかと聞く。 尻尾の方を見ようと身体を廻すと尻尾も自然と廻る。 なって見ろ、三日で嫌になるから そうだって、細君もそう云っていたよ。 此年の春突然手紙を寄こして山高帽子とフロックコートを至急送れと云うんです。 あんな鼻をつけて来るから悪るいや へえーと細君が差し合のない返事をする。 ……さて波斯人はどうかと申しますとこれもやはり処刑には磔を用いたようでございます。 妾しには地味過ぎていやだから御前に上げようとおっしゃった、あれでございますあらいやだ。 寒月君、君の事を譫語にまで言った婦人の名は、当時秘密であったようだが、もう話しても善かろうと迷亭がからかい出す。 するとまた垣根のそばで三四人がワハハハハハと云う声がする。