金田の鼻などもスターンに見せたら善い材料になったろうに残念な事だ。 なんぼ田舎者だって――これでも街鉄を六十株持ってるよ 付け文じゃないんです、もっと烈しいんでさあ、御二人とも御承知じゃありませんかと鼻子は乙にからまって来る。 へえ、君の伯父さんてえな誰だい牧山男爵さと迷亭はいよいよ真面目である。 ――なに？――毎度御贔屓にあずかりましてありがとうございます？――何がありがたいんだね。 鼻子の先刻からの言葉遣いが初対面の女としてはあまり存在過ぎるのですでに不平なのである。 いよー本式にやるのか次には拍手の請求とおいでなさるだろうと迷亭は独りで騒ぎ立てる。 線が八本並んでもあとの句が出来ないと見えて、今度は筆を捨てて髭を捻って見る。 鼻子はまた問題を改める。 何が面白いものかと主人は今でも怒っている様子である。 話しはそんなに運んでるんじゃありませんが――寒月さんだって満更嬉しくない事もないでしょうと土俵際で持ち直す。 ほのめかすどころじゃないんです。 馬鹿にしちゃいけない。 貴様なぞは知るまいが昔しアイソクラチスと云う人は九十四歳で大著述をした。